島原の精霊流し担ぎ手減少 町内会が市の支援で対策

取材前線:島原の精霊流し担ぎ手減少 町内会が市の支援で対策 /長崎
毎日新聞 2015年08月03日 地方版

520ee0711e03c 毎年8月15日に県内各地で行われ、長崎市などでは観光イベントとしても人気の精霊(しょうろう)流し。島原市の精霊流しは300年以上の歴史があるが、人口減少による担ぎ手不足などで近年、精霊船が減少している。伝統文化の衰退に歯止めをかけようと、町内会などでつくる「精霊流し行事実施協議会」が市の支援を受け、対策を講じ始めた。【近藤聡司】

 島原市の精霊流しは、独特の切子灯籠(きりことうろう)に飾られた精霊船が特徴。当日は各町内会などから繰り出した精霊船が市内を練り歩き、地区ごとに決められた流し場から有明海に流される。

 2000年ごろは130隻ほどが出されていたが、その後減少し、10〜14年は66〜88隻にとどまる。特に個人で出す精霊船が減っており、若者の市外流出などによる船の担ぎ手不足が一因とされる。

 このため、協議会は今年初めて、担ぎ手の募集を始めた。ボランティアを募り、担ぎ手の足りない町内会や個人に派遣する試みで、町内会の回覧板や市のホームページで約1カ月間呼びかけた。

 しかし、6月19日の締め切りまでにボランティアの応募は1件もなく、締め切りを1カ月延長して呼びかけを強化。その結果、6人の応募があり、担ぎ手の求人に応募した1町内会に派遣される予定という。

 精霊船は半数近くが町内会によるもの。同市浦田2丁目の町内会長、江川照男さん(76)は「町内に若者がいなくなり、50代、60代が担ぎ手に駆り出されている。若者自体がいないのだからボランティアに応じる者は少ないだろう」と指摘する。

 一方で「ボランティアの担ぎ手は必要」とも強調する。地区には1人暮らしの高齢者も多く、その人が亡くなった際、担ぎ手がいれば市外に住む遺族でも町内会に依頼し、精霊船を出しやすい。だが、現実は厳しい。

 江川さんの住む浦田2丁目を含む白山地区では毎年、子供精霊船を出している。伝統を引き継ごうと、市内で唯一、30年以上前に始まった取り組み。毎年、地元の小中学生40人ほどが自分たちの精霊船を担ぐ。

 子供精霊船は大人たちが手作りし、子供たちも作業を手伝うが、江川さんは「やがて市外に出て行く子供たちが多く、精霊船の造り方まで伝承するのは難しい。せめて大人になって古里の精霊流しを思い出し、盆に帰省するきっかけになれば」と話す。

 先細りが見込まれる現状に、市は観光客を呼び込むためにもテコ入れが必要と判断。運営費としての協議会への今年の補助金を、例年に比べ約240万円増額した。それを使って今年は2万円を上限に、船の製作費用を個別に助成する。

 島原市では海に流した精霊船の回収、焼却処分費用の一部が個人負担となり、1隻2万円がかかる。製作費の助成で、この分がほぼ賄えるという。

 しかし、今夏、精霊船を出すため、警察の道路使用許可を取った船は過去最低の64隻にとどまった。市しまばら観光おもてなし課は「精霊流しの伝統を守る取り組みは緒に就いたばかり。引き続き有効な対策を考えたい」と話している。

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